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2016.07.24 Sunday
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まく子
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西加奈子の「まく子」を読みました。
西加奈子はテヘランうまれで、
「サラバ」を書いて、
又吉直樹と友人です。
「サラバ」はすごく感動したので、
西加奈子さんの小説なら、
間違いはないだろうと思って読んでみました。
「まく子」は、
ちょっとへんな小説です。
SF小説ぽいような、
普通の児童文学のような小説です。
小学生の慧(さとし)は旅館の息子です。
慧の旅館に住み込みで働く母親と小学生の女の子が来ました。
女の子はコズエです。
目がきれいで、
スタイルもよくて、
目を引く美人なので、
町中の人気者です。
コズエと友達になり、
慧は成長していきます。
コズエとの別れの日に、
田舎の町中の人がそのことを見ました。
それを受け入れ、
人々は暮らしていく。
読み終わって、
人生について考えてしまいました。
私は年を取ったので、
これから死に向かって生きていることを実感しています。
この年で読んだから、
何でも受け入れられます。
もっと若いころに読んだら、
理解できなかったかもしれない。
人間に害を与えないなら宇宙人がいてもいい。
不思議なことは現実にあるかもしれないと、
思える年齢になった。
JUGEMテーマ:小説/詩
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2016.02.29 Monday
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サラバ下巻
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西加奈子さんの「サラバ」上巻を読んだのがずいぶん前だったので、
つながりを忘れましたが、
読んでいるうちに思い出しました。
それほど印象に残る本でした。
第四章
圷(あくつ)家の、あるいは今橋家の、完全なる崩壊
主人公の今橋歩(あゆむ)の母と姉の貴子が一緒に住んでいる頃に、
阪神大震災が起こった。
その頃姉は部屋に引きこもり状態だった。
ずっと部屋から出てこなかった姉は、
矢田のおばちゃんが話をしてくれてやっと出てきた。
父親と東京で暮らすことになった姉は手作りの巻貝の着ぐるみを着てネットで注目されるようになり、
主人公は定職に就かずに、
編集のフリーターをしていた。
主人公の彼女がきっかけで、
姉がまた公衆にさらされ、
どうしようもなくなり、
矢田のおばちゃんが遺してくれた金で外国を放浪する。
第五章
残酷な未来
おかしいのは姉だと思っていたが、
読んでいるうちに、
おかしいのは主人公だとわかってくる。
第六章
「あなたが信じるものを、誰かに決めさせてはいけないわ。」
なんと!この言葉は、
あのおかしかった姉の言葉!!
読み手もこれからの自分の生き方を考えようという気になってくる。
人生を迷っている若い人におススメの小説です。
JUGEMテーマ:小説/詩
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2015.11.09 Monday
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サラバ
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又吉直樹さんの友人ということで、
西加奈子さんを2度テレビで見ました。
「サラバ」の中に又吉直樹に似た登場人物が出てくるというので、
興味をひかれて読みました。
西加奈子さんの小説はすごくおもしろかったです。
大人になってからのわたしは、
ほとんどの人は受け入れることができるようになりました。
というのも腹の立つことをされても、
その人の事情を考えると、
言葉の裏に違うことを言いたいのだろうと考えられるようになったからです。
この小説の登場人物も行動と気持ちが違うことがわかりやすく書かれているので、
引き込まれます。
小説家は記憶力がよくないと書けないだろうなと思うほど、
昔のことや外国のことなど詳細に書かれていて引き込まれます。
下巻もぜひ読みたいです。
ことばで主張しない父親と、
個性的できれいで、
自己中心的な母親と、
「私を見て!」が強すぎて、
平凡に行動できない姉と、
目立たないように生き抜く主人公の男の話です。
父親の仕事の関係で小学生の時にエジプトで住み、
両親の離婚のためにまた日本で暮らすことになる。
小学校や中学校や高校の時に転校するのは友達関係で苦労する。
その様子もよく書けていると思う。
久しぶりに夢中になる小説を読みました。MEMO鴻上(女)アイザック(姉の夫)小佐田(母の夫)紗智子(写真家で彼女)ヤコブ、アユム(今橋歩)須久(中学からの友人)裕子(震災の頃の彼女)澄江(最後の彼女)貴子(姉)、夏江おばさん、矢田のおばちゃん(信じるもの)圷(あくつ)。登場人物が多いので、
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2014.05.14 Wednesday
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漁港の肉子ちゃん
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西加奈子の小説です。
すごく太っていて、
性格のすごくいい肉子というニックネームの母親と、
容姿のきれいな小学校高学年の女の子の二人家族の話。
お金がないシングルマザー家庭で、
不倫が原因で、
東京を追い出されて、
東北の寂びれた漁港に住むことになった。
「うおがし」という食堂で働き、
住まいも見つけた。
町の人はみんないい人で温かい。
小学校では仲間外れなどの問題もあったが、
へんな顔をする男の子と知り合って、
心が癒される。
人は外見や能力だけが大事ではなく、
心の持ち方で変わっていくということを学んだ。
後半部分に生い立ちが明かされ、
肉子ちゃんの優しさに、
涙が出た。
厚い本だが、
内容がおもしろいし、
読みやすい文章なので、
最後まで読めた。
人間関係で、
心が疲れている人におススメします。
JUGEMテーマ:小説/詩
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2013.09.02 Monday
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わたしをみつけて
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中脇初枝さんの小説です。中脇さんの小説を読んだのは2冊目です。施設の前に捨てられて、施設で成長し、引き取られた家庭で、義理の父母の愛情を確かめたくて、壺を階段から落として割ったり、壁に落書きしてみたら、児童相談所に預けられた。児童相談所では学校に行かないので、九九を覚えられなかった。そのことを人に知られないように、細心の注意を払った。何度も捨てられているから、自分に自信がない。働きながら、免許を取れる准看護師になった。担当の主治医はわがままで、横柄だが、首にされたくないから、逆らわなかった。そんな時に、新しく来た師長は小柄だが、信念を持った素敵な人。彼女が病院の人たちを変えていく素敵な話。山本弥生もたくましくなっていく。師長がどんな風に変えていくのか、読んでみてください。けっこう痛快です。
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2013.08.26 Monday
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きみはいい子
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「サンタさんの来ない家」は、教師2年目のぼくから見た小説です。クラスが崩壊しそうになっているのに、同僚教師も助けてくれないし、クラスの子とも絆がもてない。ぼくの家庭は姉も母も父も優しいしあわせな家庭なのに、クラスにはいろんな家庭環境の子がいるようだ。ぼくのクラスはどんどん壊れていく。ぼくがある宿題を出してから、いろいろ見えてきた。なんとかがんばれそうになっていく。今の教育現場や子供たちの話を聞くと、私も何か役に立ちたいと思うが、できることはあるだろうか?「べっぴんさん」あやねのママは家に帰ると虐待をしてしまう。人前ではいいママを装っているから、あやねは公園にずっといたいと思っている。ひかるくんとはなちゃんのママは身なりがきれいではないが、心は優しそう。だけど、きっと、家の中ではひかるくんやはなちゃんを虐待していると、あやねのママは思っている。みんな外と家の顔は違うと思っている。ひかるくんのママの口癖は、「べっぴんさん」この言葉は、子供に希望を与えてくれる魔法の言葉。この小説を読んだら、私にも何かができそうな気がした。わたしのような大人のおばちゃんに読んで欲しい話です。「うそつき」4月1日生まれは、学年で一番最後の生まれになる。息子の優介は4月1日生まれで、小さくて、いつも先生の近くにいる。クラスの中で特別扱いされている。優介は要領は悪いが、心のまっすぐな子だ。転校してきた体格のいい男の子(だいちゃん)と仲良しになり、我が家でご飯を食べるようになった。母親は後妻で、その子の本当の母親ではなく、ご飯も与えられないことがあるようにみえる。保護者会であった母親は化粧をきれいにした、若い女だった。我が家に毎日来ると言ったら、謝ったが、迷惑ではなく、仲良くしてもらってうれしいと伝えたら、何も言わなかった。ご飯のお礼はなかった。だいちゃんは毎日我が家に来て優介と仲良く遊んでいる。小学校は同じだけれど、だいちゃんとは中学校の学区が違うからいずれ別れがくる。「たとえ別れても、一緒にいたといういい思い出があれば、幸せな記憶が一生を支えてくれる。」この言葉はものすごく心に残った。全世界の小さな子たちに、しあわせな思い出を作ってあげたいと思った。「こんにちは、さようなら」この話は、もうおばあさんの年齢になってしまった一人暮らしのわたしと、近所の障害をもった子供と、その母親の話です。その男の子は私に会うと、礼儀正しく「こんにちわ」「さようなら」とあいさつしてくれる。最近のこどもにはわたしが見えないのか、だれもあいさつなんてしてくれない。あの男の子が挨拶してくれるときだけ、わたしはまだ存在している実感がわく。スーパーで買い物をした日に、お金を払い忘れて、店員に呼び止められた。うっかりしてしまって、謝ったが、白い目でにらまれた。ずいぶんわたしも年をとってしまった。話し相手もだれもいなくて、何日も人と言葉をかわしていない生活。雨の日スーパーの帰り道に、男のこがカギを落としてこまっていたので、おうちの人が帰ってくる時間まで、我が家で待っていることになった。迎えにきた母親は見覚えのある人だった。これからは、ひとりぼっちの私にも、障がいのある子の母親にも、春がやってくるような希望の持てる終わり方でした。どの話もうるっとくるような素敵なはなしでした。「うばすて山」妹のみわが、認知症の母を数日だけ、見ていて欲しいと頼んできた。母が私にだけ虐待をしていたことを妹のみわは知っているから、本当に申し訳なさそうに頼んできた。みわは子育てで忙しいのに、介護をよく頑張っている。母と暮らした何日かで、あの頃のことを思い出した。けれど、認知症の母はわたしのこともわからない。自分は子供のころのふうちゃんに戻ってしまっている。みわの家に母を送っていくときに、公園を思い出した。自分が育った町で、もっちゃんの母親がわたしをかばってくれていた。もっちゃんは、「うそつき」に出てくる優介の父親の幼馴染みだ。「べっぴんさん」で砂場遊びをしている公園がみわの家の近くの公園だ。こんな風に短編小説は場所がつながっていた。大人に読んで欲しい小説でした。うるっときて、いろいろ考えさせられる小説です。
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2012.12.09 Sunday
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家守綺譚
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「いえもりきたん」と読みます。
多分日本の100年前くらいの話ということで、
現実的ではない、
夢の中にいるような話です。
お金が無い物書きの綿貫征四郎という男が、
死んだ友人の家を友人の父親から借りて住む事になる。
その家は、
庭には大きなサルスベリの木があり、
池もある。
話は、
植物の名前が題名になり、
たくさんの短編小説が入っているようである。
「サルスベリ」
「都わすれ」
「ヒツジグサ」
「ダァリヤ」
「ドクダミ」
「カラスウリ」
「竹の花」
「白木蓮」
「木槿(むくげ)」
「ツリガネニンジン」
「南蛮ギセル」
「紅葉」
「葛」
「萩」
「ススキ」
「ホトトギス」
「野菊」
「ネズ」
「サザンカ」
「リュウノヒゲ」
「檸檬」
「南天」
「ふきのとう」
「セツブンソウ」
「貝母(ばいも)」
「山椒」
「桜」
「葡萄」
私はこの本を何日もかけて読みました。
読んでいると眠くなり、
夢を見てしまいます。
なにか、
幻のような小説です。
この本を読んでいる期間は、
現実的でないことも信じてしまうような感覚になりました。
人と話している時もちょっとおかしなことを言ってしまったかもしれません。
私は科学的でないことも信じてしまう方です。
この小説には、
植物に恋をされたり、
死んだ友人が何度も現われたり、
小鬼やカッパや人魚なども現われます。
100年前はいたかもしれないと思えてくる小説です。
この主人公はお金はないけれど、
人がいい人間です。
映画になったらおもしろいなと思いました。
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2011.11.27 Sunday
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神様のカルテ2 夏川草介
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神様のカルテの2です。
主人公も登場人物もほとんど同じです。
新しく大学の同期の優秀な医者が本庄病院に来た。
進藤辰也先生。
主人公の一止の初恋の相手と結婚して、
娘がいる。
家庭内に事情がある先生。
そして、
この本の大切な話は、
古狐先生の話。
古狐先生の奥様の千代夫人とハルが親しくなったり、
登場人物が繋がっていく。
最後の方では、
2回泣いてしまった。
私自身が病気になり、
入院したので、
医療が少しだけ身近になったせいで、
この話も以前より好意的に読めたと思う。
作者は医大を出たそうだ。
だから医療のことも詳しいと思う。
泣ける本としてオススメします。
山好きの人にもオススメします。
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2011.10.30 Sunday
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神様のカルテ 夏川草介
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映画化されました。
主人公の栗原一止(くりはらいちと)は嵐の桜井翔。
妻の榛名(はるな)は宮崎あおい。
信濃大学を卒業して、
本庄病院に勤務する栗原一止は、
24時間365日開業の救急患者も受け付ける病院で寝る間も惜しんで働いている。
新婚の妻との結婚記念日も家に帰れず、
連絡も取れなかった。
住まいは、
古いボロアパートで、
住民の学士殿と男爵とは心を通わせた友である。
この小説の文章が、
主人公の古い言葉使いなので、
こちらも言葉使いが移ってしまう。
夏目漱石が好きで同じ小説を何度も読んでいるらしい。
島崎藤村の「夜明け前」も好きらしい。
主人公は大学病院に呼ばれているが、
大学病院で見放された癌患者を受け入れて、
その人(安曇さん=加賀まりこ)からの言葉で考える。
この小説は泣ける小説で、
安曇さんからの手紙の場面では泣いてしまったが、
全体にゆるい内容で、
読んでいると眠くなってなかなか先に進めなかった。
薄い本なので、
桜井翔のファンなら読むといいと思う。
映画のキャストは私の想像とは違っているので、
観たいとは思わない。
きっと宮崎あおいは演技が上手だからハルに成り切れると思うが、
他の人は私の中のイメージとは違う。
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2011.07.07 Thursday
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小さいおうち
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中島京子(なかじまきょうこ)はこの作品で直木賞を受賞しました。
中島京子は1964年生まれです。
中島京子の小説を読むのは初めてです。
内容は、
第二次世界大戦が始まる頃に女中をしていたタキが、
当時を思い出しながら下書きを書いています。
昭和5年から第二次世界大戦の終りの昭和19年頃と、
女中タキが亡くなって、
書かれなかった真実がタキの甥の次男によって、
続いていく頃までの話です。
タキの甥の次男の健史がその文章を盗み読みし、
タキが亡くなった後には健史が登場人物を探し当てます。
昭和5年に学校を卒業して、
東北生まれで兄弟の多いタキが口減らしのために、
親戚のつてで、
女中になるために東京に行きます。
最初は学者の小中先生のお宅で奉公し、
次に浅野家に奉公した。
浅野家の奥様は一人息子の恭一坊ちゃんがいるが、
若くて(22歳)きれいな時子夫人。
初対面の夫人の最初の言葉が、
「タキさんと時子、名前がよく似ているわね。」
その時のタキの年齢は14歳。
8歳違い。
タキは感のいい子で、
真面目に良く働き、
可愛がられて、
時子夫人が平井氏と再婚した時にもついていった。
文章のこの辺りまでは、
穏やか過ぎて、
退屈な内容だったが、
平井氏の部下の板倉正治が現われた辺りから、
先がどうなるのか気になりだしてきた。
きれいな時子夫人は女性にも、
男性にも好かれる。
タキの恋心と、
赤い屋根の小さなおうちの思い出が板倉正治の絵の中に残り、
タキの文章の中に残っている。
第二次世界大戦の前後の頃の様子が、
リアルに書かれている所が直木賞に推薦された点だそうだ。
前回紹介した絵本の「ちいさいおうち」と、
関わりがあるのかないのかよく解からなかったが、
終わりの方に、
「ちいさいおうち」のことも紹介されていたので、
興味がますます湧いた。
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