|
評価:
森 浩美
双葉社
¥ 630
(2008-12-10)
|
森浩美さんの短編小説です。
森浩美さんは男です。
「ホタルの熱」
結婚して駿という子供ができたが、
生活が貧窮してきて、
夫が離婚届を置いて出て行った。
母子で電車に乗って出かけたら、
息子の駿が熱を出した。
民宿の女将に温かくしてもらった。
息子が迷子のホタルの光を見つけた。
私も誰かを温かく迎えてあげられる人になりたいと思った。
「乾いた声でも」
カーナビの乾いた声。
もしも主人公が道案内が上手だったら、
夫の悩みに気づいてあげられて、
夫の人生の道案内を上手にしてあげられたのだろうか。
夫が亡くなって、
夫の上司の話を聞いて、
後悔した。
「星空への寄り道」
バブル景気を体験して、
奢った生活をしていた男がどん底に落ちた。
そんな日に出会ったタクシーの運転手との会話で、
少しだけ優しい気持ちになれた。
長野の星空を見る。
「カレーの匂い」
不倫している副編集長の話。
後輩の女性に会う。
主人公は独身だが、
後輩はあっくんという息子を連れて、
お茶に誘う。
幸福の姿を見せつけられた感じ。
不倫相手からの約束の断りの電話に、
題名の言葉を言う。
「柿の代わり」
高校の新米教師の男性。
万引きした女生徒を警察に迎えに行く。
女生徒が先生に悪いことをしたことがないのか聞く。
柿を盗んだことくらいと話す。
盗んだ柿は渋柿だった。
女生徒に更生しろとうまく伝えられない気持ちと渋柿の味が重なった。
「おかあちゃんの口紅」
妹と二人兄弟の兄が主人公。
母親との折り合いが悪く、
なかなか会いに行かなかったが、
昔の口紅で、
ほどける。
「イブのクレヨン」
父親は2歳の時に、
飲酒運転の交通事故で亡くなった。
母と二人で住んでいたが、
母は男と再婚して、
子供は親戚に預けた。
成長した男は母を許せない。
優しい妻がクリスマスに起こす奇蹟。
「粉雪のキャッチボール」
サラリーマンを辞めて、
妻と別居して、
ホテルマンになった父親を息子が尋ねる。
父親のホテルを退職する日に立ち会う息子。
どの話も家族の心の話で、
最後は心が温かくなる話。
読後感がいい。