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評価:
角田 光代
新潮社
¥ 460
(2008-10-28)
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角田光代(かくたみつよ)の短編小説集です。
角田光代の小説は「八日目の蝉」が大好きです。
素敵な小説を書いた人なので、
安心して読めました。
本にまつわる小説が9つ載っています。
「旅する本」
18歳の時に古本屋に売った本をいろんな外国で見つけて、
考える話。
18歳の時にお金の方が欲しくて古本屋に紙袋2つ分持ちこんだ時に、
「あんたこれ売っちゃうの?」と聞かれた本があった。
その言葉が気になった。
手放しても惜しくないと思ったから、
古本屋に持ち込んだはずなのに、
手放した後もその本のことが頭に残っていた。
日本の同じ題名の本を外国で見つけるのだってすごいことなのに、
自分が手放した本を外国で見つけるなんて、
驚きだが、
あるかもしれないと思った。
だけど、何回も続くと物語だなと思った。
でもそんなことはどうでもいいのです。
本とは、
自分にとってどんなものなのか考えるきっかけになるでしょう。
映画でも本でも年齢が変わってから2度目に見ると、
記憶と全然違った部分が見つかることがある。
そして、その時の自分の受け取り方も違ってくる。
いろんなことを考えるきっかけをくれた物語でした。
「だれか」
24歳の時に恋人とタイに旅行に行った時にマラリアにかかった。
だんだん良くなってからも、
ずっとベッドに寝ている時に、
片岡義男の本を見つける。
外国で片岡義男の本を読んで置いていった
だれかのことを空想し始める。
本を題材として、
空想していく力がすごいと思った。
「手紙」
恋人と来るはずだった伊豆の旅館に一人で来た。
その部屋のテレビ台の引き出しに入っていた本を見つけた。
リチャード・ブローティガンの詩集。
その本の中に手紙が挟まれていた。
女性が別れた彼に宛てて書いた手紙のようです。
その手紙と詩集を読んで主人公がしたことは?
「彼と私の本棚」
5年間一緒に暮らした彼(ハナケン)に女ができ、
別れることになり、
引越しの片づけをしている。
ハナケンとは本の好みが似ていて、
同じ本が何冊もあった。
本の話題で楽しかった。
ハナケンの持っている本がよかったので、
私も同じ本を買おうとしたら、
ハナケンが同じ本を買うことないよと言ってくれた。
その時は永遠に私たちの仲が続くと思ったのに。
同じ本を好きでも別れることはあるんだな・・・・・・。
「不幸の種」
18歳の時に恋人ができた。
恋人が初めて、
私の部屋に泊まりに来た時に、
夜中に目が覚めると、
彼が本を読んでいた。
好きな本なのと尋ねると、
君の本棚にあった本だよと言う。
覚えがない本だ。
その後、恋人と別れた。
私の友人の近藤みなみと付き合い始めた。
その後も不幸はいくつもあった。
中国に旅行に行った時に、
占い師に見てもらった。
漢字を紙に書き、
やりとりをして、
「屋根」、「房」、「根子」、「原因」と書かれた。
私は「部屋の中に不幸の種がある」と解釈した。
私はあの時の本が不幸の原因だと思い、
本を元彼に渡すことにした。
近藤みなみとあった時に、
本を彼に渡してくれと頼んだ。
その後みなみに再会した時に本の行方がわかり、
唖然とする。
みなみの言葉から、
「不幸は人によってとらえ方が違う」と思った。
不幸についての認識がこの小説を読んで変わった。
「引き出しの奥」
大学生の私のことをみんな「男好き」とか「公衆便所」と言っている。
男の子と飲んだ後におごられたら、
お礼に何をしたらいいのかわからないし、
家に送られたらどうやって帰ってもらったらいいのかわからない。
そんな訳で、
男たちに飲みに誘われるし、
翌日にはお前呼ばわりされる。
何も考えてなかった私が変わった。
きっかけは、
古本屋に裏にびっしり書き込みがある本があると聞いてから、
それを探している時にサカイテツヤに会ってからだ。
サカイテツヤとは飲食しても割り勘だ。
手をつないだだけでドキッとする。
サカイテツヤと会ってから、
誰も家に上げていない。
サカイテツヤとはその本を探している。
何が書かれているのか
伝説の古本のことを想像して話す。
「ミツザワ書店」
田舎の実家の近くにおばあさんが店番をしているミツザワ書店がある。
整理されていなくて、
おばあさんはずっと本を読んでいるので、
万引きがしやすい本屋だ。
僕も一度だけ万引きをしてしまった。
それからは怖くて一度もそこに行っていない。
作家になったので、
僕の本とその本の代金を持って、
何年かぶりにいってみたら・・・・・。
「さがしもの」
この物語もなかなか素敵な話だ。
この物語の中で、
死んだおばあちゃんが言った言葉が、
この本の中の一番の私の宝物です。
「死ぬのなんかこわくない。死ぬのを想像するのがこわいんだ。
いつだってそうさ、
できごとより、
考えのほうが何倍もこわいんだ」
この言葉を見つけたことが、
私がこの本を読んだ一番の収穫です。
「初バレンタイン」
初めて彼ができた。
もう、バレンタインに送っても返されることはない。
気合いを入れてプレゼントをしよう。
チョコレートだけでは芸がない。
私の大好きな本を送ろう。
本の予約は完ぺき。
次はチョコレートを買う。
ところが私が送りたかったチョコレート売り場は込みすぎていて、
私の声が店員に届かない。
何度も試すがチョコレートはあきらめた。
彼は年下のイケメン。
こんな私にどうしてこんないい男が彼氏になったのだろうと思うほどのイケメン。
当日は最悪なことが起こったが、
本をやっと渡した。
やっぱりチョコレートにすればよかった。
落ちは何年か後に起こる。
話としてはなかなかおもしろい。
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「あとがきエッセイ 交際履歴」
ここもおもしろいのでぜひ読んでください。
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9つでしたが、
あとがきもおもしろかったので書いてみました。
お勧めの本です。
ますます角田光代が好きになりました。
もっと読みたい。